神奈川県教育委員会は11月23日、10月に公立中学区生を対象に実施した中学3年生の進路希望調査結果を公表しました。今年の神奈川県内の公立中学校3年生の生徒数は、前年度より404人少ない6万9965人です。
県内の全日制公立高校の希望率は80.7%で、前年の81.3%から0.6%低下しました。県内外の私立高校希望率も10.3%から0.3%下がり10.0%にとなりました。全日制高校への進学希望率が低下する一方で、2017年度は通信制高校への進学希望率が上がっています。また、進路希望未決定率も上がりました。
神奈川では近年、公立進学校の復権が目覚ましく、横浜翠嵐高校を筆頭とするSSKH(翠嵐高・湘南高・川和高・柏陽高)が最難関校として大学合格実績を伸ばし続けています。ここでは、主な公立進学校の希望者数の推移から、2017年度の公立高校入試を予想したいと思います。
※過去9年間の希望者数推移を示しています。前年比で△は増加、▼は減少、=は10名未満の変動です。
■最難関SSKH4校
~横浜翠嵐高校が過去最高の大激戦入試へ 学芸大附属からも流入~
○横浜翠嵐高校 504→666→580→523→620→781→694→732→786 △
○湘南高校---- 534→506→571→418→854→735→773→781→681 ▼
○柏陽高校---- 485→523→424→296→451→521→514→556→578 △
○川和高校---- 641→682→689→474→771→723→804→708→625 ▼
神奈川を牽引するSSKHの最難関4校は、全県模試やWもぎで合格確実圏偏差値が70を超える最高峰です。今年は『週刊東洋経済』や『週刊ダイヤモンド』といった有名雑誌の特集記事で、相次いでSSKHが特集されました。学力トップ層は、ますますこの4校に集中してきており、大学合格実績で他校を突き放しつつあります。
今や神奈川の公立復権の象徴的存在となった横浜翠嵐高校から見ていきましょう。前年より50名以上希望者を増やし、786名は過去最多の希望者数です。2017年度入試は、史上最高の大激戦の入試となること間違いないでしょう。
大切なのは、人数だけでなく、受験者の層も上がってきているという点です。多くの進学塾関係者が口をそろえて、「学力トップ層が、学芸大附属高校や開成高校よりも横浜翠嵐高校を選ぶようになってきた。」と言います。今春の東大現役合格者数18名は、あの共学最難関に復権した都立日比谷高校に次ぐ全国公立2位の実績。横浜翠嵐高校のライバル校である東京学芸大学附属高校と比較しても、東大現役合格率はあまり変わらなくなってきました。
中高一貫校ではない高校単独校で、これだけの大学合格実績を出せる学校は、全国でもほとんどありません。現中3生は“最強世代”になることは確実で、東京学芸大学附属高校とは完全に地位が入れ替わることになるでしょう。
逆に湘南高校は、過去5年間で最も少ない希望者数となりました。横浜翠嵐高校と湘南高校は人気を二分しますから、横浜翠嵐に人気が集まる年は、湘南の人気が下がります。
飛躍的に大学合格実績を伸ばす川和高校は、柏陽高校と偏差値が並びました。急激な入試の難化が敬遠され、希望者数は減りましたが、志望者の学力はむしろ上がっています。大学合格実績も、将来的には柏陽高校を超えるようになるでしょう。校風の違いから、勉強も運動部も全力で頑張りたい文武両道型の生徒は、横浜翠嵐よりも川和を選ぶ傾向にあるようです。
柏陽高校も近年最多の希望者数となりました。理系に強い学校のイメージですが、最近は競合する横浜サイエンスフロンティア高校の陰にやや隠れ地味な存在になっていました。しかし、横浜サイエンスフロンティア高校が来年度より中高一貫校化するため、それを嫌がった理系志向の受験生が柏陽高校に戻ってきています。
■地域有力進学校
~前年とは一転、希望者の減少相次ぐ上位進学校~
~多摩高は新校舎で希望者過去最多、横須賀高は近年最少で難易度低下か~
○神奈川総合高校- 318→324→334→540→367→442→432→417→393 ▼
○サイエンスフロンティア高校 437→409→333→354→444→447→498→408→365 ▼
○光陵高校------- 275→341→326→332→223→276→300→403→396 ▼
○横浜平沼高校--- 608→579→545→576→563→526→470→476→453 ▼
○希望ヶ丘高校--- 453→397→474→442→541→500→439→545→529 ▼
○横浜緑ヶ丘高校- 373→430→470→455→538→585→602→568→575 =
○多摩高校------- 382→488→400→257→424→440→532→525→607 △
○小田原高校----- 454→456→427→423→435→439→531→445→430 ▼
○茅ヶ崎北陵高校- 461→477→419→539→428→436→405→378→408 △
○鎌倉高校------- 486→455→418→435→620→518→501→661→630 ▼
○大和高校------- 471→414→410→470→490→494→478→559→534 ▼
○横須賀高校----- 391→376→385→375→381→392→405→407→353 ▼
○平塚江南高校--- 338→341→366→393→333→338→382→406→379 ▼
○相模原高校----- 362→355→347→412→413→389→443→477→421 ▼
○厚木高校---- 403→495→465→471→497→585→513→507→530 △
昨年度は10月時点の希望調査で、光陵、希望ヶ丘、鎌倉、大和、横須賀、相模原の6校が近年最多の希望者を集めるなど上位校への希望者集中が顕著にみられました。今年度は、打って変わって上位校への希望者は減少。大部分の高校に減少を表す「▼」マークがつくことになりました。
横浜サイエンスフロンティア高校の希望者は前年より40人以上減り365人。5年ぶりの少なさとなりました。難関大学の合格実績が好調だった半面、中高一貫校化がかなり敬遠を受けた模様です。公立進学校の良さは、国私立高校のような中高一貫校ではないから、全員同じ条件で学校生活がスタートするところです。中学生と一緒の高校生活を快く思わない受験生が多かったのでしょう。数年前に中高一貫校化した市立南高校は、今年度も現段階で定員割れ。超不人気校化しています。横浜サイエンスフロンティア高校も、市立南高校ほど極端ではないにせよ、高校受験の人気がなくなっていく可能性があります。
減少が目立つ中で、多摩高校の希望者が大きく伸びています。前年よりも80名以上増やし607人。この数字は、近年で最多の希望者数となります。新校舎の効果は大きく、高倍率の激戦になりそうです。
ここに掲載されている学校以外での注目校は海老名高校です。地域2番手校ですが、398名の定員に対して1002名という尋常でない希望者が集まりました。全県模試によると、模試段階で第一志望記入者が前年よりも4割増加していたということなので、今年に関しては異常な人気といえるでしょう。前年は1.32倍でしたが、このままでは1.6倍を超える大激戦入試となること必至です。
他にも、市立戸塚高校、金沢高校、新城高校、市立橘高校、上溝高校、藤沢西高校が、倍率2倍以上となり人気を集めました。
一方で、鶴見高校、新羽高校、田奈高校、横浜旭陵高校、瀬谷西高校、横浜緑園高校、保土ケ谷高校、横浜桜陽高校、永谷高校、 金井高校、市立南高校、磯子高校、氷取沢高校、釜利谷高校、大師高校、生田東高校、菅高校、麻生高校、上鶴間高校、城山高校、 相模原青陵高校、津久井高校、大楠高校、逗葉高校、三浦臨海高校、茅ケ崎西浜高校、寒川高校、平塚湘風高校、 二宮高校、小田原東高校、大井高校、大和南高校、綾瀬西高校などは1倍未満で、10月時点では希望者が定員を埋めるほど集まっていません。
希望者が極端に少ない理由は様々で、 田奈高校や平塚湘風高校のような地域で最も偏差値の低い学校を敬遠したり、市立南高校のような中高一貫校を敬遠したり、相模原青陵高校のように将来統廃合で消えてしまう学校を敬遠するといった要因です。
あくまでも10月時点での希望調査結果ですから、今後も希望者数や倍率は大きく動きます。受験生は過度に数字を意識せず、志望校に向かって頑張りましょう。