■桐朋高校の「東大1名ショック」が保護者や受験関係者に衝撃

「息子の中学受験を台無しで終わらせてしまった―」

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桐朋中学校の保護者が掲示板でそう嘆くほど、2017年の桐朋高校の大学進学実績の悪化は衝撃的でした。中学受験関係者とも話すたびにこの話になり、「予想はしていたけど、ここまで下がるとはね……」という反応です。

桐朋高校は、都立高校の学校群制度による凋落を追い風に大学進学実績を伸ばし続け、90年代の最盛期には東大に50名~60名を輩出し、三多摩で最高峰の進学校に君臨しました。

ところが、都立復権の動き、早稲田実業の国分寺移転、2度の自殺事件がネット上で明るみになるなど、桐朋高校にとって逆風が続きました。あっという間に、東大合格者数は8名と1ケタに、現役合格者数はたった1名だけになってしまったのです。


■東大合格者数よりもマズい早慶現役合格者数の激減


早稲田大学   現役29名 (全体に占める現役合格率37%)
慶應義塾大学   現役27名 (全体に占める現役合格率38%)

  ※サンデー毎日4月16日号より。この数字は大学の公式発表


大学合格実績を丹念に分析していくと、桐朋高校の凋落の深刻さが分かってきます。もはや東大に1名しか合格しておらず、しかもその1名は附属小学校出身者。中学入試出身180名はだれも合格していないわけですから、東大の合格実績を語っても、あまり意味のあることとは思えません。

現実的な目標大学は、早慶大や中堅国立大になるでしょう。すると、信じられないほど低い実績が露わになってしまいます。上記は2017年度の現役の早慶大の合格実績です。まるで中堅進学校かと疑うほどの実績です。

率直に言ってひどすぎます。皆さんご存知の通り、これは重複合格を含んでいて、実際には1人で早稲田大に2学部、3学部と合格していたりするわけです。推測するに、桐朋高校から現役で早慶大に届くのは、学年最上位層の15%程度でしょう。大部分の生徒たちには、早慶大ですら高嶺の花ということになります。

3年前の桐朋高校は、早稲田大学が現役79名、慶應義塾大が現役63名でした。3年間で半減。これが今の桐朋生の実力でしょう。


■浪人は桐朋の華? 国公立大現役進学者は過去最少、MARCHは堅調

1学年330名のうち、国公立大学に現役進学したのは66名で過去最少の人数です。桐朋高校の場合、「7年制」といった言葉に象徴されるように、例年学年の6割が浪人しますから、最多進路は浪人ということになります。現実的な現役での進学目標校といえるMARCH+理科大の合格実績の推移を2014年→2017年で見てみましょう。

東京理科大  41名→32名
明治大    48名→30名
青山学院大   8名→7名
立教大    11名→6名
中央大    26名→21名
法政大     9名→15名

2017年の現役合格総数は111名。MARCHは重複合格が多いことも踏まえると、桐朋高校からMARCHクラスに確実に進学するには、学年で30~40%には入っておきたいところです。



■桐朋中学校の偏差値の推移 凋落はこれから本格化する

確実に言えることは、今年の卒業生はまだまだ進学実績低下の序章の世代だということ。桐朋中学校の偏差値の推移を見れば一目瞭然です。

年度

偏差値

応募者数

2005

63

757

2006

61

674

2007

61

688

2008

60

657

2009

60

522

2010

57

499

2011

57

451 ※今春卒業

2012

57

449

2013

56

444

2014

54

390


桐朋高校はここから4年間は進学実績がさらに下がり、完全な中堅校としてのポジションになっていきます。これは私の予想というよりは、確実に起こる必然です。4年後には、日能研や四谷大塚で偏差値60以上の入学者がほぼ消え、偏差値40台の入学者が大勢いる世代になります。今年の実績のさらに半減は覚悟しなければなりません。

桐朋の教育力が落ちたわけではありません。ただ入学者の学力が大きく下がっただけ、ということです。


■進学実績は2022年まで続落し、やや持ち直した後にまた下落か

2022年頃までは、大学進学実績の低下が続いた後、2年間は多少持ち直す見込みです。理由は、この世代の入学時に、重い腰を上げた桐朋が複数回入試を開始したからです。

遅きに失した感は否めませんが、一応の凋落の歯止めにはなるでしょう。ただし、思ったよりも実際の入学者の偏差値は高くありません。ご存知の通り、入試偏差値と入学者偏差値は異なります。桐朋中学校の2日目入試は、合格した高偏差値層がことごとく辞退して、相当高い辞退率になっています。結果として、2日目入試の入学者の大半は、1日目入試の不合格者で、「それなら1日入試だけでも良かったのでは」との声もあります。

しかし、せっかく持ち直しても、現小6が受験する2018年度の中学入試では、今回の進学実績に対する失望から入学者偏差値が下がることは予想に難くありません。持ち直した後に、再び下降曲線を描くと予想されます。


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私は2010年当時の記事で「桐朋中学校の偏差値推移からすると、2016年には東大合格者数が1桁転落が濃厚だ」と書いています。予想よりも1年遅くですが、東大合格者数は1桁に転落しました。

今回は、現小5、小6が大学進学をする2025年頃の進学実績を予想してみます。

 東大 1名 京大 1名 東京工業大2名 一橋大3名 早稲田大60名 慶應義塾大20名

浪人込みでこれぐらいの進学実績を出せれば十分でしょう。東大こそ1名出すのがやっとの状況になるかもしれませんが、相変わらず地元の一橋大も複数名合格は出るでしょうし、早慶大は踏みとどまると予想します。この実績は、穎明館などの近隣競合校の数字も参考にしています。


■それでも、真の桐朋ファンは今の桐朋を望み、付いてくるのだ


「東大合格者数の減少を学校のせいにするな。桐朋らしさを失う改革は反対ー」

保護者の集まる掲示板では、現況の桐朋中学校・桐朋高校について熱い議論が交わされています。「特進クラスの設置を」「習熟度別授業の早期導入を」「高校入試の廃止を」「附属小学校の下位層を何とかして」「特待生の導入で成績優秀者の確保を」

数多くの改革案が飛び交う中で、「桐朋らしさ失う改革には反対だ。桐朋の人脈力を生かした桐朋らしい改革を」といった声も根強いのが桐朋の面白さ。

「6年間学校生活を思いっきり楽しんで、1年ぐらい回り道して浪人したって良いじゃない。附属小学校からの生徒や高校入試からの生徒が混じった多様な学力層も魅力の一つ。勉強ができなくても、何か得なコトがあれば輝くことができるのが桐朋です。」

こういうコアな桐朋ファンによって、今の桐朋中学校・桐朋高校が支えられているといっても過言ではありません。桐朋というのは、そういう寛容な保護者の子弟が通う学校でした。

ところが、2日目入試を導入して、第二志望、第三志望で残念ながら桐朋中学校へ進学するという層が流入するようになりました。こういう層は、一にも二にも大学進学を追い求めがちです。


最初に紹介した「息子の中学受験を台無しにしてしまった」という桐朋保護者の声も、実は2日目入試で第二志望校として桐朋に入学した層。桐朋中学校の入試改革によって、大学進学を追い求めたり、東大合格者数の減少を嘆くような、桐朋教育に合っていないとされる層が一定数入学するようになってしまいました。

しかし、真に桐朋教育の真髄を理解しているものなら、「なんだ、大学進学実績ぐらいで」と一笑に付すでしょう。そういう真の桐朋の理解者が、本来は入学するべき学校なのでしょう。

そして、たとえ東大合格者数がゼロになろうとも、桐朋教育のコアなファンは付いてくるでしょう。姉妹校の桐朋女子高校の独自教育も同様です。桐朋とはそういう学校だということです。

■賛否両論の自由すぎる卒業式 これが理解できてこそ桐朋ファン!?


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「桐朋の卒業式はコントですよ(笑)」

卒業生が誇らしげに語るのが、桐朋高校の卒業式。厳かな雰囲気とは対極的な雰囲気。桐朋生にとっての卒業式は自己主張をして笑いを取るコントを披露する場だといいます。

ツイッターには、桐朋高校の卒業式の武勇伝が勇ましく記録されています。その一例を見てみましょう。


このような自由すぎる卒業式には賛否両論のようで、「桐朋の自由な教育の象徴で素晴らしい!」と桐朋ファンを中心に賞賛する声もあれば、「無法地帯でやりすぎだ。」との声もあるようです。

動画の様子も数多くアップされていますが、壇上で裸になったり、ネギを掲げたり、退場のシーンでしゃぼん玉を飛ばしたり。その様子に歓声を上げる桐朋生たち。この映像を見たら、半数ぐらいの保護者は卒倒してしまい、「うちの子をこんな学校に預けたくない!」と思うでしょう。

私学なのですから、そういう方々は早々に桐朋を志望校から外せばいいわけです。こういう映像を見て、「自由で独創的な雰囲気が良い!」と思う人が、真の桐朋ファンなのでしょう。



 

■偏差値40台の生徒に大チャンス 真の桐朋賛同者が集まる状態に?


今回桐朋高校の"東大1名ショック"というのは、見方によってはポジティブにとらえることもできます。まずは、偏差値下位層や桐朋熱望組のチャンス拡大。大学進学を中途半端に重視する層は、今年の実績や今後の見通しに"失望"して消えるでしょうから、入試難易度は確実に下がります。桐朋教育は、偏差値40台の生徒たちにも十分魅力的。そういう層にとって選択肢が増えたことになります。

また、桐朋教育への賛同者が残る形となり、私学らしい純度の高い学校になるでしょう。今までのような大学進学を求める声は少なくなります。

今回の衝撃をネガティブにとらえるか、ポジティブにチャンス拡大ととらえるかはあなた次第。気になる人は、まずは学校に足を運んでみましょう。