■10年間で応募者数が7割減 学芸大附属竹早中の凋落に拍車

「全国で最も凋落が進んだ中学校の一つ―」
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東京学芸大学附属竹早中学校の応募者数と偏差値の低下が止まりません。SAPIX、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミーといった中学受験主要大手塾を調査すると、今や都内共学校の主役は、小石川中等教育学校を筆頭とする都立中高一貫校と、渋谷教育学園渋谷中学校。大学合格実績の躍進は著しく、共学志向の学力上位層が集中しています。


一方で、年々に影が薄くなってきているのが国立大附属中学校。筑駒は別次元としても、筑波大学附属中学校、東京学芸大学附属竹早中学校、世田谷中学校、小金井中学校がマスメディアで取り上げられることはほとんどなくなってしまいました。


「偏差値は年々に下がって入学しやすくなってきている」という印象はあるのですが、今回は、文京区の東京学芸大学附属竹早中学校に焦点を当て、今、国立大附属中学校で何が起きているのかを探ってみたいと思います。


まずは、都立中高一貫校が台頭していなかった2004年と、直近の2015年から2017年の3年間の中学入試の応募者数を比較して、東京学芸大学附属竹早中学校の人気の推移を見てみます。そこから見えてきたのは、目を疑いたくなるような現実でした。

 《東京学芸大学附属竹早中学校の中学入試応募者数の推移

〇男子

 2004年 473人
  ・
  ・
 2015年 210人
 2016年 191人
 2017年 162人


〇女子

 2004年 485人
  ・
  ・
 2015年 209人
 2016年 193人
 2017年 151人

「ここまで応募者数が減っていたとは」というのが、教育関係者の抱く感想ではないでようか。 人気が低下していることは知っていましたが、応募者数は半減どころでは済みません。2004年の3~4割程度しか、2017年は応募者が集まっていないのです。

しかも、当日の受検率も下がっていて、例えば男子はここから60人程度が欠席します。倍率は2倍台になり、かつての6倍、7倍の高倍率の面影はまったくありません。


なぜ、東京学芸大学附属竹早中学校の人気が低迷するのでしょうか。その要因を探ってみました。

■小石川中の台頭が直撃 中高分離型より完全中高一貫校を志向

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東京学芸大学附属竹早中学校は、明らかに都立中高一貫校の開校の影響を直撃しています。しかも、同じ文京区には、小石川中等教育学校という、都立中高一貫校の最難関であり、創立者、伊藤長七が生んだ府立五中の流れを汲む名門校が存在します。

小石川中等教育学校の誕生によって、共学志向の偏差値60オーバーの学力上位層が、小石川中等教育学校を志望するようになりました。小石川は、年々に大学合格実績を伸ばしていることにも触れなければなりません。1学年160名の精鋭集団から、2017年は東大に14名、京大6名、東京工業大6名、一橋大5名、東大理Ⅲ合格者を輩出するなど医学部入試にも強く、難関国立大の現役合格率は、すでに東京学芸大学附属高校を超えています。

SAPIXなどの大手塾によると、東京学芸大学附属竹早中学校にかつて入学していた偏差値60オーバーの上位層は、現在では大部分が小石川中等教育学校に流れているということでした。小石川中等教育学校は、6年後には東大合格者が30名を超えると予想されていて、名実共に都内共学校の首位に立つ日も近いでしょう。


東京学芸大学附属竹早中学校は、ご存知の通り、附属高校へ進学するには高校入試を受けなければなりません。その際に6割の生徒は他校へ進学するわけですが、下位層を排除し、上位層だけを集める構造をつくっても、現役に限定すれば、完全中高一貫校の小石川に追いつかれてしまう現実があるわけです。

二つの観点があると思います。一つは、小石川中等教育学校の教育システムが優れているという点。小石川は完全中高一貫校ですから、高校入学者を気にすることなく、真に6年一貫の極めて効率的なカリキュラムを組むことができます。私学と全く同じ先取り型カリキュラムで、私学と同じ検定外教科書をベースに、21世紀型教育を行っていますから、大学受験で結果が出ないはずがありません。

もう一つは、東京学芸大学附属竹早中学校→東京学芸大学附属高校というシステムが、やはり良くないわけです。中学と高校が分断したカリキュラムでは、せっかく中学受験勉強をしてきた意味が半減してしまいます。過半数が外に追い出される学校システムというのは、今の時代に合っていないと言わざるを得ません。

■失われた東京学芸大学附属高校のメリット 辞退者続出で定員割れ

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東京学芸大学附属竹早中学校と、東京学芸大学附属高校の中高分離という特殊な形態の敬遠に加えて、せっかく苦労して上がれたとしても、肝心の東京学芸大学附属高校への魅力が薄れてきているというのもあるわけです。

大学合格実績でいうと、2017年の東京学芸大学附属高校は東大現役合格者数で日比谷高校についに抜かれ、神奈川の横浜翠嵐高校にも難関国立大(東大・京大・東工大・一橋大)の現役合格者数で初めて敗北しました。

東京都内では2~3年前から「東京学芸大学附属高校は、都立日比谷や都立西の併願校」という状況が定着。さらに2017年度は、神奈川県内で横浜翠嵐高校や湘南高校を第一志望とする生徒が、東京学芸大学附属高校に合格後大量辞退。「東京学芸大学附属高校合格者の6割が横浜翠嵐高校と湘南高校に抜ける」という前代未聞の入試となり、東京学芸大学附属高校は史上初の入学者定員割れとなってしまいました。

一連の不祥事によって、「東京学芸大学附属高校=陰湿ないじめのあった高校」という負のイメージが定着してしまったことも、凋落を後押ししています。

内進生が高入生に対して、せみの幼虫をなめさせる、体育祭の練習の際にわざと倒して手首を骨折させる、肩の高さから投げ出して脳震とうを起こさせるといった陰湿ないじめの発覚が次々と発覚。さらに、男子生徒による盗撮事件といった問題も明るみになってしまい、東京学芸大学附属高校の積み上げてきたイメージが一瞬で崩れてしまいました。


■東京学芸大学附属高校は、東大合格者数が10人台に低下は必至か

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では、このままの状況だと、東京学芸大学附属高校はどこまで大学合格実績が下がってしまうのかという話に移ります。東京学芸大学附属高校の東大合格者数は、神奈川県から入学する高校入試組で支えられていることが知られています。

ところが、前述のように今春の高校入試は「合格者の6割が辞退して横浜翠嵐高校や湘南高校へ進学」という状況で、学力トップ層ほど受かっても入学しなかったという話があります。3年後から東京学芸大学附属高校の大学合格実績に深刻なダメージを与えることは避けられません。

さらに、附属中学校からの内進生の学力低下も深刻です。これも前述のように、東京学芸大学附属竹早中学校の応募者数はこの10年間で激減し偏差値も急落。ほかの世田谷中と小金井中も同じような状況です。この世代が高校を卒業するころには、やはり大学合格実績への影響は避けられないでしょう。

3年後には、東大合格者数が半減するのは入学者の学力状況の分布図からすると確実に起こる未来です。そして6年後には、附属中学校の学力低下の影響も受けて、東大合格者数は10人台に落ち込む可能性があります。

東京学芸大学附属竹早中学校から東京学芸大学附属高校というルートを思い描いている中学受験生の保護者は、3年後、6年後に確実に起こるであろうこうした状況を覚悟したうえでの入学が必要とされるでしょう。

「東大合格者数が10人台にまで落ちてしまっても、それでも竹早中学校から東京学芸大学附属高校というルートを我が子に歩ませたい。」という強い信念があるなら、中学受験をさせても問題ないでしょう。

逆に「そこまで大学合格実績が落ちてしまうと、附属高校進学の魅力がなくなってしまう」とか「優秀な生徒達に囲まれて刺激を受けてほしい」という思いが少しでもあるのならば、受験は慎重になるべきです。


■附高への進学権を捨て、日比谷高校や都立西高校への進学が増加

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そんな東京学芸大学附属竹早中学校の生徒は、附属高校へ見切りをつけ、あえて他校へ進学する生徒が増えてきています。日比谷高校や都立西高校の昨年度の入学者の出身中学校は、東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が多さが目につきます。

昨年はいじめ問題もあって、インターネット上の掲示板で「急きょ、家族会議によって附属高校への進学を止めることにした。」という書き込みや、「附属高校へ進学しても大丈夫なのか心が揺れている。」といった切実な相談が多数寄せられました。

附属高校への進学を目指さずに外部の高校を志望する風潮はここ10年間のトレンドとなっていて、2011年には、東京学芸大学附属竹早中学校が、附属高校へ強制的に行かせようと、併願校を強制辞退させようとした事件がマスメディアによってリークされ、新聞やテレビで大々的に報道されてしまい波紋を呼びました。現在では、このような指導は行われずに、附属高校への進学を目指さずに都立進学校を目指す選択も当たり前という風潮になってきています。

元々、東京学芸大学附属竹早中学校という学校は、優秀な生徒は東京学芸大学附属高校へ進学せずに、都立トップ校(日比谷高、都立西高、都立国立高など)に大量に進学するという、都立トップ校へのバイパスのような学校でした。学校群制度の制定によってその流れは断ち切れてしまったわけですが、最近になって、再び元の姿に戻ろうとしているのかもしれません。

附属高校への進学を前提とした竹早中学校の受験は、魅力が無くなってきているのが現状でしょうが、見方を変えて、都立トップ校への進学を目指すための竹早中学校の受験というのは、今後ますます増えて多数派になってくるのではないでしょうか。


■有識者会議の衝撃 「国立大附属は抽選導入し多様な層受け入れを」

 現在、文部科学省で行われている「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議」における最終報告がまとまりつつあり、東京学芸大学附属竹早中学校をはじめとする国立附属が大きく変わることが決定的となりました。

有識者会議の内容を簡潔にまとめると、以下のようなものになります。


 現在の国立大学附属校は、本来の教育実験校としての役割を担うことができておらず、本来あってはならないエリート校化してしまっている。学力優秀層の受け入れやリーダーの養成は、地域の公立学校や、公立中高一貫校、私立学校が担うべきであって、国立大附属校のすることではない。そのため、今後国立大附属校は、受験競争を煽るような入試は止めて、抽選を導入し、学力の幅広い層を受け入れて、真の意味で公立学校のための実験校となるような環境に変えていく。




今後は公表された最終報告をもとに、全国の国立大附属校がそれに従って改善していかなければなりません。確かに、優秀な生徒たちが集まってしまうと、国立大附属としての公立学校のための教育実験校の環境としては著しく不適切となってしまいます。今後、公教育による優秀な生徒を集めたリーダー育成は、東京都内でいえば、小石川をはじめとする都立中高一貫校や、日比谷や西といった都立トップ校が担っていくことになります。

東京学芸大学附属竹早中学校や東京学芸大学附属高校も、数年以内には、優秀な生徒が入学しすぎてしまったり、受験競争を煽るような入試を改善することになります。抽選の導入や、面接や報告書の重視、学力検査の廃止といったことも考えられます。仮にそうなったとすると、東京学芸大学附属高校は、教育実験校にもかかわらずエリート校化してしまっているという長年の矛盾がようやく解消されることになります。