■今なぜ、西高の教育が支持されるのか


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杉並区の閑静な住宅街にあるのが、都立西高校。通称、西高。

大学合格実績は、過去20年で最高の実績となり、長年都立高校を牽引してきた自負を感ずる結果であった。
 ・東京大学 32名

・京都大学 14名

・東京工業大学 13名

・一橋大学 14名

・国公立大学医学部医学科 23名

・旧帝大学(北大+東北大+名大+阪大+九州大)  23名

◎難関国立大学合計 119名

・早稲田大学 158名

・慶應義塾大学 110名

◎早慶大合計 268名

高校受験生と保護者のために、西高生の大まかな進路を説明しよう。最多進学先のベスト3は、1位:東京大学、2位:国公立医学部、3位:慶應義塾大学となっている。1学年の生徒数は約300名。うち約120名が上記の難関国立大学に進学。80名が、お茶の水女子大、東京外国語大といったその他国立大学に進学。300名中、200名が国立大学に進学する。

それ以外の約100名は、ほぼ早稲田大学と慶應義塾大学が占める。ほか、私立大学医学部への進学者も、全国の公立高校の中では最も多い。例えば、東京慈恵会医科大学には2名が進学。大学の公開する2016年度の出身高校一覧を見ると、桜蔭、開成、麻布、駒場東邦、ラサール、女子学院など、複数進学者を出した学校は西高以外すべて私立中高一貫校であった。

ちなみに、MARCH(明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)の進学者数は、わずか4名にとどまる。中高一貫校と比べて、3年制の高校単独校は下位層が少なくなるようだ。

■東京芸大3名、京都大15名、北海道大12名からわかる西高の寛容さ


都立西高校は、懐が深い学校だ。進学校だから東大志向は強いが、決して特定の大学に誘導したりはしない。

その象徴が、京都大学15名進学だろう。当然彼らは、東大を目指せるだけの力があった生徒たち。それでも、「京都大学に行きたい」という生徒がいれば、それを受け入れ、応援する雰囲気がある。

西高の京都大学の進学者は、過去3年間でなんと47名。首都圏の高校の進学者数としては最大勢力だ。

東京都内だと、中学受験の御三家として知られる麻布高校も、京大進学者の多い学校だ(2016年は14名が進学)。西高と麻布の共通点は、懐が深い自由闊達な校風であること。あと、変人が多いというのもあるかもしれない(失礼)。ひょっとすると、京都大学の学風との共通性が高いのかもしれない。

「芸術界の東大」の異名がある東京芸術大学に3名合格するというのも、進学校としては異例中の異例だ。東京芸大といえば、合格は東大よりも難しいとされる超難関大学。

全国の進学校を調べたが、東大にこれだけ合格する一流進学校で、東京芸大に3名も進学者を出している学校は、西高のほか存在しなかった。

海外志向も強まっている。西高では毎年、海外大学への進学者を出している。アメリカなどのメジャーな国のみならず、ヨーロッパのチェコの大学の医学部へ進学した生徒もいたというから驚きだ。

考えても見てほしい。クラスメイトの中に、才気溢れる東大生がいる、あえて西へ旅立つ京大生がいる、医者の道を志した医学部生がいる、北の大地を目指した北大生がいる、芸術界の最高峰である芸大生がいる、海外へ飛び立った同士がいる。

こんなにもバラエティーに富んだ進学校が、いったい東京都内に、いや日本にあるだろうか。

西高という特異な校風が生んだ奇跡の進路。西高生は、あらゆる才知に恵まれた生涯の友を得るに違いない。

■西高は、気取らない。自然体で。


西高が好きだと公言する人は結構多い。それは、卒業生だからというわけではない。教育関係者や、我が子を通わす保護者までもが、気づけば西高ファンになっている。西高の、進学校なのに気取らず、自然体であることが、好感を呼ぶのだと思う。

入学式を終えた新入生を待ち受けるのは、怒濤の部活動勧誘。愛の泉から正門まで、熱烈な勧誘を受けるのだ。西高生活の、はじまり はじまり。

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ドーン!

入学すると同時に、机に置かれているのが、西高の攻略本、西高のすべてが詰まっているといっても過言ではない、『飛翔』とよばれる情報誌。

卒業していった高3生が、まだ見ぬ新入生のために作られたもので、40年以上も生徒たちによって自主制作されているものだ。そのページ数は、なんと300ページ。これを熟読すれば、西高の先生、西高用語などを裏情報まで知ることができる。西高生のバイブルといえる書物だ。

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■西高では、校長先生がダイブする


西高では、校長先生がダイブするらしい。

嘘のような、本当の話。

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写真は、記念祭の閉会式の一コマだ。 「西高は、運動会などの生徒会行事はすべて生徒たちが自分たちでするので、校長といえども生徒の言う通りにしなければならない。西高の伝統で、校長は壇上からダイブします。日本の校長先生で、壇上からダイブする校長は自分ぐらいでしょう。」と嬉しそうに話す宮本校長。

ちなみに、宮本校長は全国高等学校長協会という、日本全国の校長先生が集まる組織の会長をしている凄い方なのだ。そんな宮本校長が、ダイブするのだから、西高、恐るべし。

西高生活を彩る学校行事の数々。まずは、記念祭。この玄人好みのポスターの秀逸さ。

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記念祭での「つるばみ同好会」のライブ風景。

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「軽音楽部とつるばみって何が違うの?」

西高初心者が抱く疑問の一つ。軽音楽部が固定メンバーでバンドを組むのに対して、つるばみは固定バンドを組まず、曲ごとにバンドを結成する。

軽音とつるばみ、二つの組織が共存共栄しているのが興味深いところだ。こんなところにも、西高らしさが溢れ出る。あなたは軽音派?つるばみ派?

■浪漫倶楽部という存在 西高の象徴である非公式の地下組織


西高には、非公式の秘密組織が存在する。

冗談のように聞こえるかもしれないが、本当である。

その名も、浪漫倶楽部。

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組織の起源は、1970年代に柔道部のメンバーらが密かに結成したのが始まりといわれている。現・東大法学部教授の高原明生氏らが創設メンバーであったとされる。

社会風刺団体でもあり、電波少年的な体当たり企画や奇抜な企画を、映画上映などを通して世間に訴えている。

ワタナベエンターテインメント取締役の吉田雄生氏はインタビューで、「西高の浪漫倶楽部が、僕の転機だった」と話す。勉強ができるのは当たり前。エンターテイメント方面で輝こうと思った彼は、浪漫倶楽部での経験を基に、その後成功を収めている。

浪漫倶楽部への入部は、「東大合格よりも難しい」とウワサされる。気になる人は、記念祭の映画上映へ足を運ぼう。

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ちなみに、浪漫倶楽部のほかにも、秘密結社ベトリナという組織もある。「ベドリナ」とは、アルバニア語で「無駄」の意味。「青春とは、方向を間違えたエネルギーである」という理念のもと活動している。ただし、この組織は西高の公式サイトのサークル一覧に書かれており、完全な非公式組織ではない。

とはいえ、秘密結社のような不思議な団体が活動する西高っていったい……。

■文武二道を極める


西高の説明会へ行けば、必ず聞く言葉がある。

「文武二道」

文武両道とは言わない。二つの道を極める、という意味で、文武二道。

西高の運動部は強い。進学校であるのに、好成績を残している。アメリカンフットボール部を紹介したい。

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東日本における高校アメフトは、西高が発祥の地だ。

第二次世界大戦後に、当時の平山清太郎先生が創部したのがはじまり。チーム名は「OWLS」。知恵を象徴するフクロウがマスコットだ。以来、60年以上の歴史の中で、幾多の名選手や指導者を輩出してきた。中でも、京都大学のアメフト部への輩出数の多さは有名で、西高アメフト部→京大アメフト部の伝統が連綿と続いている。

今年、六大学野球で「都立西高校」の名がよく聞かれた。西高出身の桐生祥汰選手(東大経済学部)が、東大として23季ぶりにベストナインに選ばれたのだ。

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中学時代は武蔵府中シニアに所属。西高時代は1年夏よりセカンドレギュラー。 高3夏から1日10時間以上の猛勉強で、現役で東大合格した。西高が誇る文武二道の実践者だ。

■西高の新しい試み アメリカ研修


西高の良さは、伝統を受け継ぎつつも、新しい試みを柔軟に取り入れていく姿勢があるところだと思う。2年前から、海外リーダーシッププログラムを他校に先駆けて実施している。

希望者40人の西高生が、アメリカのハーバード大学、マサチューセッツ工科大学の講義を体験したり、現地学生と交流したりディスカッションをする。また、ニューヨークで西高を卒業し現地で活躍する方々と交流したり、国連本部などを見学するという、壮大な体験だ。

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ハーバード大学で平和に関する講義を受ける西高生。

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西高には、アメリカ支部の同窓会組織がある。世界中に同窓会組織があり、同窓生が活躍しているのは心強い。写真は、ニューヨークでの同窓生との交流会。「私たちも、昔は西高生だった」。

■西高は、高校入学の生徒が気取らない学校生活を送る最後の進学校


都立西高校のぶれない教育が今、改めて評価されている。

周りの進学校が次々と中高一貫校化して、高校募集を減らしたり停止する中で、西高はずっと、高校受験生のための学校であり続けている。

仮に西高が中高一貫校になってしまったら、独自の校風は消え失せ、そこらへんにある普通の進学校と同じになり、均質化されてしまうだろう。西高の校風は、高校から始まる3年制であるからこそ続いているのだ。

西高の先生は語る。「西高の良さは、だれにでも居場所があることです。運動が得意な人、苦手な人、オタクな人、行事に熱心な人、自分の趣味に没頭する人、それぞれを尊重します。」

東京都内で、高校受験を経て入学する生徒たちが、変に気取らず、自然体で高校生活を送れる学校というのは、そう多くない。進学校に限定すれば、もはや都内には、西高ぐらいしか残されていないという事実に気付く。

かつては、西高のような学校が、もっとあった気がする。今は中高一貫校ブームで、西高が唯一の存在。最後の砦だ。

西高に異動した先生が「まだこのような学校が都内に残っていたとは。」と感動したという話を思い出した。西高の灯を消してはならぬ。西高はいつまでも、西高でいてほしい。周りのすべての進学校が中高一貫校になっても、西高だけは抗う存在であってほしい。




■2018年度の高校受験生が西高を選ぶべき理由


ところで、2018年度の高校受験生はかなりラッキーな世代だと言われている。というのも、2021年度の大学入試改革世代の1期生になるからだ。

大きな入試改革となるため、旧入試制度の最後の世代となる現高1生は浪人を嫌う。2021年度入試だけは、浪人生が消えて、現役生のチャンスが大幅に拡大することが確実と言われている。現中3生の世代は、東大や京大、一橋大、東京工業大といった難関国立大学に非常に合格しやすいということだ。

しかも、最終的に決定した2021年度の新大学入試は、「大学入試が都立トップ校の入試に近づいた」と言っても過言でないほど、西高生にとって有利になる。

〇国語と数学が記述式問題に
→大学入試問題が、西高の自校作成問題と同じ体裁になる。

〇英語は英検などの外部検定を活用
→西高受験生の多くが準2級や2級を取得しているため、従来型の勉強の継続で対応可能。

〇難関国立大学でも推薦入試が拡大
→先行実施している東大や京大の推薦入試は、文武両道型の名門公立高の合格が急増。
 西高のような海外研修や部活動での活躍が評価されて難関国立大に入る事例も拡大。
 西高の推薦入試も国立大学入試問題と類似している。


簡単に言えば、従来の選択問題オンリーだったセンター試験に代えて、西高の自校作成問題のような、数学は途中式を書かせたりする記述式問題に変わる。

また、西高の推薦入試と全く同じような推薦入試を、国立大学でも本格的に拡大する(あくまでも一般入試が中心であることは2020年も変わらないが)。

どう考えても、都立トップ校向けの勉強をしてきた生徒達にとっては追い風の改革だ。文部科学省の入試改革に携わる関係者に聞いても、「西高のような入試や教育をやっている学校は、2020年を境にかなり実績が伸びると思う。」と話す。

参考外部リンク:2018年度入試は大学附属校より都立進学校を選ぶべきなのか(高校研究より)

あちこちで「2018年受験の中3生の世代がうらやましい」という声が聞こえてくるが、もちろん追い風になるのは、西高のような、記述中心の入試問題と、アカデミックな教育を一貫して実施しているからこそ。これからが楽しみだ。