私学が隠そうとする難関私大合格者数の“激減”
大学入試の変化に対応できずに、合格者数を激減させた私立高校を実名で挙げてみる

yamatekaiti


2017年度は、文部科学省が私立大学の入学定員の厳格化を求めた影響で、早稲田大、慶應大、上智大、MARCHといった有名私立大学の合格者数に変化がありました。

今までと何ら変わらずに多数の合格者を輩出する進学校もある一方で、今回の入試の変化に対応できずに、有名私大の合格者数を激減させる学校が私立高校を中心に続出する事態に。

“私立応援団”の一人である森上展安氏は私教育新聞で次のように語っています。


 例年、大学入試の結果には一喜一憂させられるが、今春の場合、ほとんどの高校が東大・難関国立大実績に次ぐ目標としている早慶上理(早稲田・慶應・上智・東京理科)への合格者数を大幅に減少させたことは関係者に驚きをもって迎えられた。23区内の有名私大が定員の厳格化を実行した結果で、この影響は付属系属校人気への傾斜、進学校人気の陰りとなって今後募集などに影を落とす恐れがある。(中略)

 前年比で2割以上の減少校もあるが、3~4割台も上位校で珍しくない。最大の減少校は136人(延べ数。以下同じ)減の私立共学校。次いで122人減。次は119人減や117人減など。こういった大幅な減少校さえあって、この春の私大合格実績はショッキングな事態となった。

 そういってもピンとこないかもしれないので、136人の減少をみた私立共学校の場合、卒業生対比にして84・8%の早慶上理合格率が一挙に56・5%まで低下したのだ―そのように見えてしまうことが大変なことだ。次いで大きな122人の減少校である私立共学校の場合も、卒業生対比67・3%の前年の早慶上理合格実績に対して、これが48・8%にも低下―したように見える。

 もともと延べの合格者数なので数字自体は実際の数より大げさだとは誰もが理解しているものの、今回のように大学自体が合格者数を絞り込んでくると、今度は実際の合格者数実数の減少より減少幅が拡大して映るのが何とも痛いところ。この早慶上理の合格者比率は首都圏の私学にとって魅力の源泉の一つだっただけに、この事態をどう乗り越えるか、いわば共通の課題であろう。



首都圏の多くの私立高校において難関私大合格者数が激減してしまい、森上展安氏は「募集などに影を落とす恐れがある」「この事態をどう乗り越えるか」などと危機感を煽っています。

ところが、この記事では難関私大の合格者数の増加高ばかりを実名で取り上げて、激減校は募集への影響を避けるために実名が書かれていません。

森上氏の記事だけではありません。サンデー毎日といった週刊誌で取り上げられるのは「合格者数が増えた子高校」という観点ばかり。私立高校の不都合な情報が出回ることはありません。いったい、どこの高校が合格者数を激減させたのでしょうか。


■山手学院高校、開智高校、高輪高校が“激減御三家”

情報新報では、2016年度と2017年度の有名私立大学の合格者数を分析。その結果、合格者数を大幅に下落させた高校は大部分が首都圏の私立高校であることが判明しました。

そこで、前年比で有名私立大学の合格者数が大きく減った高校ランキングという、週刊誌とは正反対のワーストランキングを作成しました。


■早慶上理の激減校
開智高校        -124名
山手学院高校      -118名

■MARCHの激減校
山手学院高校      -284名
豊島岡女子学園高校    -149名

■早慶上理+MARCHの激減校
山手学院高校      -402名
豊島岡女子学園高校    -179名
高輪高校        -162名



不名誉な激減校にランクインしてしまったのは、開智高校(埼玉県)、山手学院高校(神奈川県)、豊島岡女子学園高校(東京都)、高輪高校(東京都)となりました。いずれの学校も前年比で尋常でない数の減り方をしています。

このうち、豊島岡女子学園高校を除く3校には共通点があります。それは、国立大学志向があまり強くなくて、難関私大への志向が強い学校であるという点です。

こうした学校は、文系科目と理系科目を幅広く勉強する必要がある国立大学よりも、私立大学に積極的に生徒達を送り込んでいました。「私大合格者数は国立大合格者数よりも絶対数を増やしやすい」(教育関係者談)ということですから、実績を稼ぐのは国立大学よりも遥かに簡単です。

ところが、今回の入試の変化によって、こうした高校出身の生徒達は、対応できずに不合格になる生徒が続出しました。この程度の変化に付いていけないと、2021年以降の新大学入試にますます対応できなくなる恐れもあるのではないでしょうか。

■早慶上理の合格総数 東京私立勢は600名減、東京都立勢は200名増

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ここで興味深いのは、「難関大学合格者数が激減した高校ランキング」において上位にランクインするのは首都圏の私立高校ばかりで、東京都立高校はほとんどランクインしていないという事実です。

それもそのはず。2012年と2017年の早慶上理の合格者総数を比較すると、東京私立は600名も激減させているのに対して、東京都立は逆に200名増加させているのです。(※東京私立614名減、東京都立213名増)

私立VS都立という観点で難関大学の合格者総数を比較すると、都立勢が大学入試の変化にもしっかりと対応していて、東京私立勢は定員抑制の煽りを直撃したという結論になります。

■国立大学の合格者総数 増加数は東京都立勢が圧勝

それでは、国立大学の合格者数は5年間でどのように変化したのでしょうか。2012年と2017年を比較して国立大学合格者数が25名以上増えた高校をピックアップしてみました。


《5年間で国立大学の合格者数が増えた東京の高校》

69名増 ●小山台高校(都立)
52名増 ○広尾学園高校(私立)
50名増 ●多摩科学技術高校(都立)
46名増 ●小松川高校(都立)
44名増 ●新宿高校(都立)
39名増 ●戸山高校(都立)
31名増 ○吉祥女子高校(私立)
30名増 ●立川国際中等教育学校(都立)
29名増 ○宝仙学園高校(私立)
28名増 ●八王子東高校(都立)
26名増 ●調布北高校(都立)
25名増 ●小金井北高校(都立)
25名増 ●小石川中等教育学校(都立)
25名増 ○城北高校(私立)


ご覧の通り、増えた高校の大部分が都立高校であって、私立高校の増加校はわずかであることが分かります。マスメディアが、一部の大学合格実績の伸びた私立高校を誇張して宣伝し、あたかも私立高校全体が大きく伸びているような先入観を持ちがちです。

ところが、全体を俯瞰して調査すると、東京私立勢は難関私大・国立大の両方において苦戦を強いられ、東京都立勢の実績伸長が止まらないという状況が見えてくるのです。


■私立高校の“胡散臭い”グラフに騙されない 冷静な判断を心がけたい

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難関私大の合格者数が激減した私立高校は、あの手この手を使ってその事実を隠そうとすることでしょう。上記のグラフをご覧ください。上は都立文京高校の大学合格実績の推移グラフ。下は桜美林高校の大学合格実績の推移グラフです。

桜美林高校のグラフに注目してください。一見すると、順調に大学合格実績が伸びているようなイメージが植えつけられます。ところが、よく見てみると、比較している年度が、2011年、2014年、2017年と飛んでいます。前年の実績はグラフからは分かりません。

実は、桜美林高校は大学入試の変化の影響を受けた学校の一つで、2017年の大学合格実績は、前年比で落ち込んでしまいました。にもかかわらず、この推移グラフは前年からの落ち込みがなかったことになっています。

一方で、上の都立文京高校のグラフに注目してください。特定の年度を恣意的に抜粋するのではなく、全ての年度をありのままに掲載していて丁寧です。当然、すべての年度が前年より増加というわけにはいかず、年度によっては前年よりも落ち込んでしまったこともあるのですが、それも包み隠さず、ありのままの実績を掲載しています。都立文京高校の愚直な姿勢は評価しても良いのではないでしょうか。

私立高校は営利企業と同じですから、都合の悪い事実は多くの場合隠されてしまいますし、説明会の内容やパンフレット、ホームページは、私学コンサルタントといった外部の企業に委託されて作られた奇麗なものです。大学合格実績のグラフは常に右肩上がりが求められ、「私立勢が都立勢に負けている」という不都合な情報は積極的に出されません。

幸い、現代はインターネットなどの手段によって、不都合な事実を含めたむき出しの情報を手に入れることができるようになりました。学校選択の際は、賢い選択が求められる時代になったということでしょう。