穎明館中学校 止まらない偏差値の下落の真相は?

「多摩地区の進学校系の私立中学校の凋落が止まらない―。」

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中学受験関係者から聞こえてくる声は、多摩地区における私立進学校の没落が加速しているというもの。その象徴ともいえるのが、かつて多摩の雄として存在感のあった桐朋高校の凋落でしょう。2017年度はついに、現役の東大合格者数が1名だけという低迷ぶり。「桐蔭学園以来の大凋落」と教育関係者が称するほどの転落です。

しかし、マズい状況にあるのは桐朋中学校だけではないようで……。首都圏模試の偏差値の推移から見えてきたのは、八王子市のある共学私立中学校のとんでもない下落ぶりでした。


■男子偏差値下落ワースト5校
1位:穎明館中学校     -6
1位:城北埼玉中学校   -6
1位:城西川越中学校   -6
4位:桐蔭学園中学校   -5
5位:独協中学校     -2

■女子偏差値下落ワースト5校
1位:穎明館中学校    -6
2位:江戸川女子中学校  -4
2位:東京純心女子中学校  -4
4位:晃華学園中学校    -3
4位:明大付属明治中学校  -3



5年間の偏差値下落数のワーストは、男子・女子共に穎明館中学校という結果に。多摩地区においては、桐朋中学校に次ぐ2番手私立中学というイメージですが、近年は桐朋中学校の凋落によって同じ土俵で語られることも多くなったといいます。

そんな穎明館中学校が、なぜ偏差値が下がってしまったのでしょうか。真相を解き明かします。

■南多摩中と相模原中の台頭が直撃 上位~中上位層は両校へ進学

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穎明館中学校の偏差値大幅下落の原因として最も聞かれたのが、競合近隣校に成績上位層~中上位層が根こそぎ奪われてしまったというものでした。

その学校とは、神奈川県の相模原中等教育学校と、東京都の南多摩中等教育学校です。多摩地区に在住の中学受験志向の家庭で、かつて穎明館中学校に進学していた層が、年々に相模原中と南多摩中に流れるようになってきています。

相模原中等教育学校と南多摩中等教育学校は、学費が6年間無償にもかかわらず、私立中学と同様の検定外教科書や副教材を使用し、中学3年時には高校内容に突入するなどの先取り型カリキュラム。しかも、先進校を積極的に研究をするなど改革熱心。教員団についても「例えば、南多摩中等教育学校は、都内の中・高3万人の教員の中から独自の公募選抜で優秀な教員を集めていて、一般的な私立中より恵まれている。」ということで評判が良いのです。

私立中学受験組が、相模原中等教育学校や南多摩中等教育学校の評判を聞いて次々と第一志望校を変更。その結果、穎明館中学校は、成績上位層~中上位層にとって選ばれない学校になってしまったというのが真相なようです。

■大学合格実績は相模原中と南多摩中の圧勝 穎明館は全項目で最下位

大学合格実績を比較してみても、穎明館中学校は、まだ2期生しか輩出していない相模原中等教育学校や南多摩中等教育学校に完全に勝てなくなりました。

以下は2017年春の最新の大学合格実績です。ポイントは浪人合格をのぞいた現役生のみの数字という点。学校の大学進学力がありのままにわかります。


■東京大学
相模原6名 南多摩3名 穎明館2名

■一橋大学
南多摩4名 相模原2名 穎明館1名

■東京工業大学
相模原8名 南多摩4名 穎明館3名


■国公立大学合計数
相模原57名 南多摩41名 穎明館34名


■早稲田大+慶應大合計数
相模原60名 南多摩40名 穎明館29名



ご覧のように、難関国立大学はすべて相模原中等教育学校と南多摩中等教育学校が上回りました。さらに、国立大学の合計数や、難関私大である早慶大の合計数も2校が上回ります。

1学年の生徒数は、南多摩中150名、相模原中160名、穎明館中180名ですから、現役合格「率」に換算すればさらに差が開きます。現状であっても、ここまで大学合格実績に差がついてしまうのです。


■現小6が大学受験を迎える7年後は、大学合格実績で大差がつく理由

大切なことは、この大学合格実績はまだ、相模原中等教育学校や南多摩中等教育学校の2期生の実績であって、穎明館中学校がまだ偏差値の高かった世代の出したものだということ。

相模原中等教育学校や南多摩中等教育学校の教育力や学校力が本物だと世間に周知されるようになり、この2校はここ数年で成績上位層の入学が急増しています。

その成績上位層は、かつてなら桐朋中学校や頴明館中学校に進学して、東大や東工大といった国立大学や早慶大に合格していた層です。彼らが桐朋中学校や穎明館中学校を選ばなくなって、相模原中や南多摩中を選ぶようになりました。

この流れが本格化した現中2世代から、大学合格実績はさらに差が拡大するのは確実でしょう。相模原中等教育学校や南多摩中等教育学校は、東大合格者数が2ケタに近づくかもしれません。

一方で、穎明館中学校は、去年と今年を比較しただけで、首都圏模試の偏差値が4も下落しました。1年間でこれだけ下がるということは、中学受験生が大学合格実績の変動をシビアに見ながら選択している証拠です。

成績上位層の流出が止まらない穎明館中学校は、果たして6年後も難関国立大に1人でも合格者を出すことができるでしょうか。正念場です。

■多摩地区は10年間で私立優位から都立優位に変わった

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多摩地区の中学受験における最難関校はどこでしょうか。かつての桐朋中学校が中堅校にまで転落してしまった今、最難関と称される学校は、早稲田実業学校中等部と、都立武蔵高校附属中学校の2校です。

都立武蔵高校附属中学校の大学合格実績の躍進は目を見張るものがあり、中高一貫生120名の精鋭集団から、東大6名、京大2名、東工大4名、一橋大3名など高い実績を出しています。

昨年は東大に初めて2ケタの11名を出すなど、多摩地区で最も伸びている学校です。国際数学オリンピックでは、開成高校、筑波大附属駒場高校、灘高校の3校と並んで、都立武蔵高校の生徒がメダル受賞者を出したニュースをテレビや新聞でご覧になった方も多いのではないでしょうか。

かつてなら桐朋中学校に進学していた成績優秀層が、今や都立武蔵高校附属中学校に集中して入学するようになりました。時代が変われば、成績優秀層の入学先も変わるということです。

ちなみに、多摩地区の東大合格者数の首位は、高校募集しかない都立国立高校です。東大合格者数は例年20名前後で安定し、一橋大合格者数は日本一。

多摩地区は都立進学校の選択肢が非常に多くて、都立トップ校である都立西高校や日比谷高校への通学も高校生にもなれば容易なため、「わざわざ中学受験しなくても、高校受験で十分。」「中学受験で第一志望がダメなら、滑り止め中よりも高校受験。」という家庭が増えているのも近年の特徴です。

穎明館中学校や桐朋中学校に代表されるように元気がない多摩地区私学ですが、大学附属校は百花繚乱の大激戦地区です。国分寺に移転した早稲田実業学校を頂点として、明治大学や中央大学といった有名私立大の附属校が軒を連ねます。

もっとも、大学附属校は「中学受験よりも高校受験のほうがはるかに入学しやすい」(多摩地区進学塾談)というのは常識で、大学附属校にこだわるなら、わざわざ中学受験する必要もなさそうです。


■偏差値データを踏まえ7年後の大学合格実績を大予想

多摩地区の中学募集のある進学校の大学合格実績はどう変化していくのでしょうか。日能研、四谷大塚、SAPIX、首都圏模試の統計データを基に、各校の進路実績の特徴を踏まえ、現小学6年生が大学受験を迎えたイメージで数字を予想してみました。(※数字は浪人合格も込みで予想しています)


●都立武蔵高校附属中学校
東京大16名 一橋大8名 東京工業大8名 国立大110名

●相模原中等教育学校
東京大10名 一橋大4名 東京工業大10名 国立大80名

●南多摩中等教育学校
東京大8名 一橋大5名 東京工業大8名 国立大60名

○桐朋中学校
東京大1名 一橋大3名 東京工業大2名 国立大80名

○穎明館中学校
東京大0名 一橋大0名 東京工業大1名 国立大20名 


今後最も厳しいのは桐朋中学校で、大方の受験関係者の予想通り、まだまだ大学合格実績の凋落は続きそうです。今春の中学入試の入学者の東大合格者数がゼロだったことを踏まえると、東大合格者がゼロになるのも時間の問題かもしれません。

台風の目となりそうなのは都立武蔵高校附属中学校で、実績の伸長から、ここ数年ですっかり多摩地区最難関進学校の地位を確立しつつあります。区部の御三家中との併願も多く、優秀な生徒の入学が増えています。中学入試においては不動のナンバー1を確立しそう。

穎明館中学校は、偏差値の推移を踏まえると、難関国立大はかなり厳しいと言わざるを得ないでしょう。現実的には、MARCHに進学することが目標の学校というイメージでしょう。

穎明館中学校の緑豊かな環境は変わりませんから、偏差値が下がったことで、今まで入学できなかった層がたくさん入学できるようになります。その意味で、熱望組にとってはチャンスが広がったと捉えることもできますね。

当たり前ですが、学校の魅力は偏差値だけでは測れません。偏差値は学校選択の様々な尺度のうちの一つ。上述の通り、穎明館中学校の偏差値急落の真相は、近隣の競合中学校の躍進の煽りを受けたもので、穎明館中学校自体の魅力が落ちたというわけではないでしょう。熟考したうえで、中学受験するのかしないのか、第一志望をどこにするのか、第一志望がダメなら、滑り止め校でも入学するのか、そうでないのかを判断したいですね。