私立高校が実施する「併願優遇制度」とは?


公立高校や都立高校が第一志望である受験生に対して、滑り止めに利用してもらうために私立高校がおこなっている一般入試の制度を併願優遇と呼びます。以下では、東京や神奈川で併願優遇を実施する私立高校の一般例を説明します。


 


併願優遇を実施する私立高校は、「5教科内申合計が20以上」といった内申基準を出します。この基準をクリアすれば、その私立高校の合格がほぼ保証されます。つまり、併願優遇においては、内申点だけで合否のすべてが決まります。使用される内申点は、中311月ごろに中学校から発表される数値(仮内申と呼ぶ)です。


 


この内申点基準をクリアして、中学校の先生との三者面談で「私立A高校の併願優遇制度を利用したい」と伝え、許可をもらいます。


 


1215日以降には、三者面談の決定事項を踏まえて、中学校の先生が、私立A高校に出向いて、併願優遇を利用する生徒のことを伝えに行きます。これを入試相談事前相談)と呼びます。私立高校側が了承をすれば、この時点で事実上の合格となります。


 


210日以降の私立高校の一般入試日に、併願優遇を利用する生徒は受験をします。ただし、入試相談の時点ですでに合格が確約されているので、不合格となることはありません。つまり、カタチだけの形式的な受験です。その後にある合格発表によって、正式な合格となります。


 


つまり、流れとしては


1.内申点の基準が達している


  


2.三者面談で併願優遇利用の旨を伝える (11月~)


  


3.中学校の先生による入試相談で事実上の合格 (1215日~)


  


4.2月の一般入試を経て正式に合格 (210日~)


というものになります。


 


併願優遇のメリット


・「行く高校がある」という安心感


12月段階で、進学可能な高校を1校確保することができます。「行く高校が確保されている」という安心感を得られることが最大のメリット。受験生は安心して、第一志望の公立高校や都立高校に向けた勉強に専念できます。


多くの公立中学校では、この併願優遇を用いて、高校を確保させることが重要な任務となっています。公立中学校の進路指導では、「進路未決定者」を1人も出さないことが最大使命だからです。「併願優遇で滑り止めの私立を1校確保してくれれば、ほかはどの高校を受験してもかまわない。」と言う先生も多いようです。


 


併願優遇のデメリット


便利な併願優遇ですが、デメリットが数多く存在します。


進学先に対する縛りの規定


併願優遇による受験において、「第一志望の公立高校に不合格であった場合は、必ず本校に入学しなければならない」という規定のある私立高校が多くあります。この場合、併願優遇で受験する私立高校以外の私立高校を併願受験することができません。もしも第一志望の難関公立高校が不合格で、進学先が併願優遇で確保した滑り止めの中堅私立高校となった場合、本人の実力からすると著しく不当な進学先と言わざるを得ません。


ほかに、もっとレベルの高い私立高校を併願で受けたい受験生は、「ほかの私立高校との併願を認めるか否か」の規定を確認してください。もちろん、他の私立高校との併願も認める併願優遇を実施する学校も多くあります。


 


私立高校の生徒層の問題


併願優遇を実施する私立高校は、入学者の大部分が公立不合格組で占められることになります。第一志望ではない生徒が大半のために、高校に対する愛着や愛校心が少ない傾向にあります。また、世間からはどうしても、「○○高校は公立の滑り止め校」というレッテルで見られます。公立の難関高校を目指していたのに、不合格で滑り止めの私立高校に進学した場合、レベルが低いために、自尊心が保てない生徒が多いのも事実として知っておくべきです。


 


非正規教員の比率の高さ


併願優遇を実施する私立高校の教育レベルは、必ずしも高いものではありません。これは、私立高校側はもちろん、学校や塾の先生もあまり積極的に教えてくれない情報です。


そもそも併願優遇を実施する私立高校は、公立不合格者を大量に集めて、授業料をがっつり集めて収入を増やすことを目的にする学校が多いです。それゆえに、生徒数が非常に多い学校が多く、しかも、学年によって生徒数の差が大きく異なってしまいます。このような私立高校は、生徒数やクラス数が読めないこともあって、非常勤講師の比率が高い傾向にあります。(非常勤講師とは、つまりはアルバイトのような先生です)


20121013日の朝日新聞にて、私立高校のアルバイト先生の比率が著しく増えているということが大々的に報じられました。なんと、私立高校の平均して約4割が非正規の教員だというのです。もちろん、これはあくまでも平均ですから、生徒数の不安定な私立高校であれば、もっと非正規教員の比率が高いことは想像に難くありません。(私立高校も、偏差値の非常に高い私立高校や有名大学附属高校は非正規教員比率は低いです)


都立高校は正規の教員の比率が私立高校と比べて非常に低いですから、教員は長期的な視野に立って指導ができます。また指導経験豊富な教員が多いです。非正規教員の多い私立高校では、先生の入れ替われが非常に多く、指導に専念ができません。(私立高校は教員の入れ替わりが少ないというのは幻想です。)さらに付け加えると、併願優遇を実施する私立高校は、もともと商業高校や工業高校であった学校が多く、正規教員といえども、実は大学受験指導の経験のほとんどない先生が多いという事情もあります。


このような情報は、私立高校の学校説明会へ参加しただけでは絶対に教えてくれません。私立高校は、受験生をできるだけたくさん集めて、収入を増やすことを目的としていますから、良い情報や、誇張された情報だけを提供します。私立高校の受験を視野に入れるときは、このような実態も知っておいた上で、冷静に判断したいものです。